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寺田寅彦随筆集 (第1巻) (岩波文庫)

寺田寅彦随筆集 (第1巻) (岩波文庫)

寺田 寅彦, 小宮 豊隆
定価 : ¥ 693
発売日 : 1963/01
出版社/メーカー : 岩波書店
おすすめ度 : (7 reviews)
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カスタマーレビュー
人生の愉しみ, 2008-06-23
随筆家の代名詞のようにこれほど有名な寅彦ですが、その名の高さがかえって災いしてか、恥ずかしながら不惑を過ぎるまでなんとなく敬して遠ざけてきたのでした。が、たまたま何かの本で引用されていた短い文章を目にして、それが余りにも素晴らしかったので、これはやはりちゃんと読まねば、と思い立ち入手しやすい本書を手に取りました。
すでに評価の確立した著者について今さら、ではありますが、何気ない日常を切り取る観察眼の的確さ・鋭さもさることながら、簡潔なのに時折はっとするほど新鮮な描写がちりばめられた美しい文章にすっかり心奪われてしまいました。この歳になるまでこんなに優れた書き手を看過していた自分はなんと愚かだったのかと後悔しきりですが、しかし逆にこれから読むべきもののリストにこれほど素晴らしい随筆群が加わったことは(ちょっと大袈裟ですが)残りの人生を大いに楽しみなものにしてくれました。
購入を迷われる方は、機会があればほんの数ページなので冒頭の「どんぐり」だけでも目を通されることをおすすめします。随筆ではありますがまるで良くできた短編小説のようなおもむきで、かけがえのない人との大切ないとおしい思い出が深く心に残ります。読後いくつかの場面がまるで自分の記憶のように鮮やかな映像となつかしさともにふとよみがえってくるような気までするのが不思議です。
早くに読了してしまうのはもったいないので少し時間をかけながら全五巻を味わってみたいと思います。
心に残る随筆集, 2007-04-15
常人では名状しがたいものを名状してしまう豊かな表現力と、科学者ならではの奇抜な観点に驚かされました。精神的に疲弊してしまった病人の心理を見事に言い表してる『球根』には特に胸打たれて、何度も読み返しました。栞を挟んで、いつでもすぐにそのページが開けるようにしてあるくらいです。著者の人柄が滲み出た、味わい深い1冊です。第二集以降も購入するつもりです。
振れ幅が気になる, 2007-03-28
 全5冊の第一巻。明治28年〜大正11年にかけての22篇が収められている。
 ずいぶん振れ幅のある文筆家という印象を受けた。面白いものと、そうでないものの差が激しい。「自画像」とか「蓑虫と蜘蛛」のような、身辺の話題を軽く書いたものに優れたものが多いようだ。ちょっとしたユーモアとか、諧謔的な部分に魅力がある。逆に、「科学者と芸術家」や「笑い」のように思索的なものは面白くない。思いつきの域を出ず、アイディアとしてもいまひとつに感じられた。
 全5冊を読み切るのは、なかなか大変そうだ。
物理学者の自然への随想, 2006-06-12
随想集の第一巻のテーマは自然。物理学者である著者が自然を観察し、折々に思ったことを書いています。
冒頭の「どんぐり」は亡き妻の思い出。かなりセンチメンタル。「竜舌蘭」も「花物語」も花にまつわる思い出や随想を書いたもので、「花物語」は夏目漱石の小品集を思わせる雰囲気があります。自然が丁寧に描写されていて、著者の自然に対する暖かなまなざしが感じられます。
「旅日記」「先生への通信」は旅行の日記。前者は日本から欧州へ移動する道中で後者は欧州での滞在記。当時のたびの様子を垣間見ることが出来ます。
「病院の夜明けの物音」「病室の花」は病を患ってからの日記。友人が見舞いと共に持ってきてくれる花の観察とその花が枯れていく描写が痛々しい。
「丸善と三越」は面白い。寺田先生の休日の過ごし方です。丸善と三越の店内とその周辺の当時の様子が描写されており、現在と比較してみるのは一興と思います。
本書に収録されている「科学者と芸術家」や「物理学と感覚」は科学者である寺田先生の本領が発揮されるエッセイであり、必見ですが、科学者らしい物事の観察と考察だけでなく、それを丁寧に文面に描写するその他の随筆に感服しました。
科学者の人間的なまなざし, 2005-11-27
 物理学者で俳人でもあった著者は随筆の名手としても知られていますが、この随筆集5冊のそれぞれに、心に残る色あせない眼差しの文章がみつかります。
 「私は生命の物質的説明ということからほんとうの宗教もほんとうの芸術も生まれて来なければならないような気がする。ほんとうの神秘を見つけるにはあらゆる贋物を破棄しなくてはならないという気がする。」第一巻では「春六題」にこんな言葉があります。科学者らしい、宗教や芸術を考える言葉だと思います。「田舎では草も木も石も人間くさい呼吸をして四方から私に話しかけ私に取りすがるが、都会ではぎっしり詰まった満員電車の乗客でも川原の石ころどうしのように黙ってめいめいが自分の事を考えている。そのおかげで私は電車の中で難解の書物をゆっくり落ち着いて読みふける事ができる。」こんな「田舎雑感」の文章は、通勤電車の中ののつらさを和らげてくれる優しさがあります。
 探求し、分析する視点は科学者であり、対象を暖かく見つめ、受け止める視線は人間的であり、著者の感性あふれる文章は、読む人それぞれに新鮮な視線の驚きを与えてくれるのではないでしょうか。
 ゆっくり、ゆっくり、読んでください。加速し続けている、時間との、他者との競争の毎日。その最たるものの一つである科学の中にも、一人ひとりの科学者の中にも、著者のまなざしのようなものがきっと奥底にあるのです。これほどVividな言葉にならなくても。そう信じたくなってきます。
 寺田寅彦が俳句雑誌「渋柿」に載せた随想を集めたものが、岩波文庫から「柿の種」として出版されていますが、こちらも寺田寅彦の感性に触れるにはよい一冊です。

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