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聖灰の暗号〈上〉

聖灰の暗号〈上〉

ひじりはいのあんごう〈うえ〉 / 帚木 よもぎふ

帚木 蓬生
定価 : ¥ 1,575
発売日 : 2007/07
出版社/メーカー : 新潮社
おすすめ度 : (6 reviews)
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カスタマーレビュー
良くも悪くも日本人の作品, 2008-07-14
 先に下巻の方にレビューを書いたのだが、言い足りないので、こちらでも少し。断っておくが、帚木作品は大体においてファンである。
 私は多分、ごく普通に育った日本人であり、キリスト教に詳しいわけではないのだが、どうも腑に落ちない。手稿の筆者マルティの理論(というほどのものもない)も、それに感銘を受ける主人公たちの考えも、要するに人間が無心で行うことすべての中に神がおり、目にするものすべてに神がおられるって、つまり日本古来の「八百万の神」の信仰ではないか。これに対して、仮にもヨーロッパで1神教であるキリスト教徒として育ったクリスチーヌやエリックが共感するというのは、あり得るのだろうか。信仰の自由を書くのなら、もっとほかに幾らでも書きようがあると思う。
 要するに、書き手も読み手も、良くも悪くも日本人だということではないのか。
勉強になった, 2008-07-06

私は、単純に面白かった。
「ダヴィンチ・コード」より、こちらのほうがわかり易かったし。
カタリ派にしろ何派にしろ、宗教がなぜ分裂していくのか、不思議。
イスラム教もキリスト教も、元(根っこ)は同じような気がするのだけどなー。
カタリ派とローマ教会がなぜ相容れないかの理由は、この本を読んで理解はできたが。
カタリ派の歴史を知るだけでも価値がある, 2007-09-23
二人ほど前にレビューを書いた方が、「全キリスト者を侮辱」する作品と酷評しているが、この作品で取り上げられているカタリ派というのも立派なキリスト者であった、ということを忘れてはならないだろう。宗教的な権力闘争(とは言ってもカタリ派のほうに権力欲があったわけではないのだが)と政治的な領土獲得欲が都合よく手を組んだことで、滅ぼされることになった南フランスのカタリ派とカタリ派を擁護する貴族達、彼らについての歴史的な事実を推理小説という形を借りて日本の読者に知らせた、というだけでこの作品は価値がある。カタリ派弾圧に象徴されるような異端に対する抑圧は、キリスト教という宗教の病なのではなく、キリスト教会という制度の病である、ということをはっきり理解する必要がある。出来るだけ多くの方がこの作品を読んで、西欧の根幹にある制度の問題点を少しでも読み取ることが出来ればいいのだが。ただし、この作品、ミステリーとしては今一である。
ミステリーとしてはちょっと。, 2007-08-16
12〜13世紀異端のキリスト教であるカタリ派をローマ教会が弾圧したという実話を元に、歴史学者が偶然発見した地図を手がかりに、その弾圧の証拠を宝探しのように見つけていき、それに誘拐劇などが絡み合うミステリーだ。実際にカタリ派へのローマ教会からの弾圧は相当あったようで、ネットで調べると日本語だけでも沢山出てくる。その弾圧の物語がこの本の3/4以上を占める。キリスト教異端弾圧の歴史物語を読むという意味であれば、この本を読む意義は大きい。私は夏休みでもあったので、ゆっくりこの弾圧の歴史の物語を読むことができ、大いに勉強になった。ただミステリーとしての部分がかなり薄くなってしまっているので、ミステリーとしてはあまり面白くない。(私は夏休みに長編のミステリーを読むことにしているので、その点では期待はずれであった)
また昔の物語として読めればいいのだが、現代のローマ教会、されには現教皇を批判するような箇所が多々あるので、その辺はちょっといただけないと思った。踏み込んではいけない領域に踏み込んでしまっていると感じた。
私としては、異端弾圧の歴史の部分もっと押さえて、ミステリーの部分をもっと膨らませて欲しかった。
現代人に必要なもの, 2007-08-04
おおよそ文学とは、著者の感覚を読者が感じるものなのかもしれない。そういう意味で言えば本著の意図するところは達成されているのではないだろうか。
須貝、クリスチーヌ、エリック、エリーズ、カタリ派の聖職者たちと手稿を護り通した人たち。そしてその相反する立場にいる人たち。その人たちの心が読み取れる作品ではなかったか。と同時に、その心とは、現代人が忘れている人間らしい心。
いうまでもなく宗教と人間とは切っても切り離せない関係にある。悪の側に立つならば、宗教的権威と政治権力が結託して人間を支配しようとする心は現代にも生きている。その反面、宗教を人間の側に取り戻そうとする心もある。いつの時代もそれらがシーソーのように揺れ動いているのだ。
しかし、私は、本著を読んで思うに、人間らしい生き方、人間らしく生きるための、また人々と生きていくための「覚悟」を見たような気がする。そのことを感じるならば、本著に書かれたものが史実か、史実でないかは関係のないことなのである。
アリエス教授は言う、真贋を見分ける感性を持つことも人間にとって不可欠な資質だ、と。これこそが本著のテーマ、主題であるのだと確信する。現代に生きる人々はそのことを真摯に学ばなければいけないのではないだろうか。

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