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チェルノブイリの森―事故後20年の自然誌
メアリー マイシオ
,
Mary Mycio
,
中尾 ゆかり
定価 :
¥ 2,310
発売日 :
2007/02
出版社/メーカー :
日本放送出版協会
おすすめ度 :
(4 reviews)
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カスタマーレビュー
原発事故が作りだした「野生の王国」
, 2008-08-11
人類史上最大の環境破壊であるチェルノブイリ原発事故が作りだしたものは、大量の放射能をその中に含みながらの「野生の王国」だった。人間の放射能被害のみが過大に強調されるチェルノブイリ原発事故だが、放射能よりも何よりも人間の存在こそが自然にとって最大の脅威であることを示す衝撃的な書。
意外な事実もいろいろ教えてくれる現地取材記
, 2008-04-05
ウクライナ系のアメリカ人である著者が、事故のあといてもたってもいられなくなって、
仕事を辞めて現地で取材した記録。
チェルノブイリが一大自然保護区となっていて、絶滅が危惧されたモンゴルノウマが移入されて増えているとか。
大方は、目に見える汚染など無いのだけれど、たまに見つかる汚染のひどい場所では、
木がひん曲がって生えたりしているらしい。この写真にはかなり驚く。
ヨハネ黙示録八章10−11節にあるニガヨモギの記述
第三の御使い ラッパを吹きしに
灯火のごとく燃える大いなる星
天より落ちきたり 川の
三分の一と水の源水との上に落ちたり
この星の名はニガヨモギという
水の三分の一はニガヨモギとなり
水の苦くなりしによりて
多くの人死にたり
がチェルノブイリ原発事故と関係づけられて当時騒がれたらしいが、実際の植物学はもう少し複雑。
どうもここにあるのはニガヨモギとは違う植物らしい。
チョルノブイリ アルテミシア・ウルガリス
ニガヨモギ(ポリン) アルテミシア・アブシンチウム(つやつやした繊毛あり)
著者はたまたま植物学者と一緒に現地を取材して回ったのでこのことを知った。
他にもいかに作られた話を人々が信じてしまうかという実例が紹介されている。
立ち入り禁止区域をオートバイで旅行して回ったといってホームページで写真を公開して話題になった女性の話。
著者が取材の過程で現地の人に聞いたところでは、旦那さんと二人で(あるいは現地ガイドも含めた団体旅行か)
車で回って所々で写真だけ撮っていったらしい。公開しているのはその時の写真。
一杯食わされた、というところだろうか。
自然を破壊するのは?
, 2007-08-09
チェルノブイリ原子力発電所事故で放射能汚染された地域の現状のレポート。著者は現状の評価に大変戸惑っている。
汚染地域の放射性物質の濃度は短寿命の核種の消滅で減っているものの、主としてSr(ストロンチウム)90(半減期28.8年)Ce(セシウム)137(半減期30.0年)等の比較的長寿命の核種は今後数百年に渡り汚染地域に残り、環境基準以上の被爆を生物に与え続ける。一方、チェルノブイリの汚染地域は、人類の関与が無くなった結果、豊かな自然が回復して、よほど注意深く見ないと汚染の影響を見いだすことが出来ない。政府の制止を無視して住み続ける人々にも、影響を見つけることは難しい。そもそも放射能汚染が原因での健康被害も、初期のI(ヨウ素)131(半減期8.04日)による甲状腺障害(これはヨウ素剤の適切な配布で防げた)以外は、明白には見えない。
この、汚染防除の難しさと、放射能による自然と人類への障害の少なさと、汚染が図らずももたらした自然の回復の間で著者の心は揺れ動く。レポートはウクライナとベラルーシの汚染地域の様々な場所を訪れ、防除の難しさと回復した自然の美しさを書くことの繰り返しとなっている。同じテーマの変奏曲が延々とあって、日本人には少々油濃い。
とりあえず、読者は著者と一緒に戸惑うしかないのだろう。戸惑いながら、原子炉事故に伴う放射能汚染の特性が頭に残ればいいのではないだろうか。気をつけないといけない核種は、I131,Sr90,Ce137。ヨウ素は半減期が8日と短いので事故直後が勝負。すぐに非放射性のヨウ素を摂取して、放射性のものが入って来ても甲状腺に滞留しないようにする。Srはカルシウムとして挙動するので、骨に入れば比較的長い時間滞留する。γ線を出さないので、どの程度体内に残留しているかの評価が難しい。Ceはカリウムとして挙動する。体内の滞留機関は比較的短いので、摂取しない環境に戻れば数ヶ月で体内から無くなる。γ線を出すので、残留量を測定するのは簡単である。などの事実を知ることが出来た。断片的な知識が体系化されたのは良かったと思う。
私も著者と一緒に戸惑っているわけだが、一つ言えることは、原子力も絶対悪ではなくて他の技術とのバランスで眺めるものなのだろう。「チェルノブイリの森」は原子力をむやみに恐れ、放射能の環境基準を必要以上に厳しく設定することで出現した不思議な自然であると、私には思える。自然は人類が考えるより懐が深い。
訳者のあとがきを見ると、原著にはあまりに図や写真が少なかったので補充したとある。私にはそれでも全然足りないと感じた。西洋人の著書はどれも図版類が少ないのは前から気になっていた。西洋人では書物に図が入ると、子供向けに見られるのだろうか。こちらも不思議だ。
巨大生物が存在する?
, 2007-06-04
放射能を浴びた森の中でいったい何が起こっているのか?それを、勇敢にも取材したのがこの本だ。放射能を浴びた生物の代表といえば、ゴジラ。ひょっとすると立ち入り禁止区域に指定されたのこの森には、ゴジラのように異常な成長と変態を遂げた巨大生物がうようよしているのだろうか?あるいは突然変異を遂げたばかでかいキノコや羊歯が生い茂り、古代の地球を彷彿とさせるような風景が展開されているのだろうか?
答えは読んでのお楽しみだが、そこでは少なくとも、人間の予測を超えた信じられない出来事が進行しつつある。それを自然の力と見るか、人間の罪と見るかは意見の分かれるところだろうが、チェルノブイリの森がある意味で「壮大な実験場」であることは間違いないだろう。
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