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「経済人」の終わり―全体主義はなぜ生まれたか

「経済人」の終わり―全体主義はなぜ生まれたか

P.F. ドラッカー, Peter F. Drucker, 上田 惇生
定価 : ¥ 2,520
発売日 : 1997/05
出版社/メーカー : ダイヤモンド社
おすすめ度 : (8 reviews)
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カスタマーレビュー
現代社会にも通じる, 2008-10-09
 資本主義や民主主義の行き詰まりや,不況が起こった時に,全体主義が始まると述べています.それは苦労の末に民主主義を勝ち取った英仏の制度をただ取り入れただけの日本やドイツやイタリアに起こりやすいと言っています.国がピンチになると国民が一丸になろうという風潮が起こり,それが0.1%でも半分を超えていればそれに反する残りの49.9%を排除するのが全体主義である言っています.
 今であれば第二次大戦で「アメリカと戦うこともやむなし」と国の宣伝に矛盾を見つけることができますが,現代ではグローバル化した複雑な関係が大衆にとって国の方針に矛盾を見つけにくくなり,再び全体主義がよみがえろうとしています.
 多くの人に読んでもらいたい良い本です.
 ご本人はオーストリアからアメリカに亡命したせいか,本ではアメリカをかなり賞賛しています.
 
1939年出版のピーター・ドラッカー処女作, 2008-03-26
内容については「商品の説明」の通り。ファシズム・ナチズムのメタナラティブ的分析としては最初の本だそうです。「20世紀初頭のウィーン生まれ」と知ってドラッカーにぬるい興味を持っていたのですが、二十代でこんな本を上梓する一種天才肌の若者だったとは驚きです。
ファシズム・ナチズムは現在「産業」化していますから、バッタもん本もずいぶん出回っています。マルクス主義史観のファシズム論は読んでも時間の無駄ですし、「民族性」に言及する歴史語りは三流と相場が決っています。各国の思惑が絡んだきな臭さを感じることもしばしば。Goldhagenの『Hitler's Willing Executioners』を英米メディアが持ち上げたのは、EUの盟主たる統一ドイツへのアングロサクソンの嫌がらせじゃないのかとか。しかしバッタもんに神経質になるあまり名高い著者の本を手に取ると今度はやたらハードな読書体験になったり。アーレントの『The Origins of Totalitarianism 』など一般人が読めば「こんな長くて難しい本を読むつもりでは…」と泣くことになります。
本書は大変に読みやすい一冊。マックス・ウェーバー、ヴィルフレード・パレートといった学際主義的社会生態学を手本にしたと言うとおり、著者の複眼的視点が大変に有難い(政治経済、社会思想、宗教といった大テーマから同時代の体験談も交え)。著者の宗教に対する視点は殊に痛切です。社会主義も資本主義もあの状況ではナチズムに対抗する力は持ち得なかった。何故ならそれらこそが絶望の根源だったのだから。本来的には、ナチズムに対抗する力を有していたのは宗教だけだったのだと。同時に、著者は近現代社会における宗教の限界を認識してもいます(宗教は個人を救済しても集団は救済出来ない)。コンセンサス不在の混沌とした分野ですし、一般読者が一冊だけ選ぶのならば本書が最適ではないかと思いました。
「全否定」を原動力に空転し続ける全体主義, 2008-03-11
経営の神様、ドラッカーの処女作。
全体主義というものがなぜ発生してきたかを鋭く分析している。
全体主義というのは、あらゆるものの「否定」においてのみ存在している。
逆に言えば、全体主義は何一つ積極的な価値を打ち出すことが出来ない、そういうものなのだ。
そして大衆は、失業や貧困、絶望などのために全体主義を支持する。
全体主義は自身の不満を何一つ解決してくれないが、全体主義を信じないならば悲痛な現実に目を向けなければならなくなるため、ますます全体主義を信じようとする。
全体主義は麻薬なのだ。
近代の西洋は、人間を「経済的満足だけが社会的に重要であり、意味がある」(p48)とする「経済人」として扱ってきた。
その底にあるのは、人間の本質を自由と平等とに見る考え方である。
しかし、「経済人」の考え方は誤っており、そのほころびを全体主義は突いている。
この本が1939年に書かれたというのは驚くべきことだ。
細かい点にはその後の歴史と異なる点もある(独ソ開戦はしない、など)が、ナチスや全体主義を単純に民族性や野蛮性に還元する現実が今日でもなお多い中で、彼の分析は光っている。
なぜWW2が起こったのか良く分かる。, 2007-09-20
なぜファシズムが生まれたのか、なぜ共産主義が生まれたのか、彼らに対抗するにはどうすればいいのか、つまりなぜWW2が起こったのかがよく分かります。
当時の欧州社会の息遣いが聞こえてきそうなほど正確で的確な記述、大恐慌の最中の欧州社会の疲弊振りやナチスの狂乱振りと、それに熱狂する大衆の姿を見事に記しています。
そしてファシズムが生まれた原因とファシズムの生態、そしてファシズムに対する対応策までも見事に書き記しています。
ファシズムは完全自由主義が行き着いた拡大至上主義的資本主義経済や民主主義への大衆の絶望であり、共産主義に続く反体制の権化であるという分析には感服した。私は市場原理主義者だけれど、それが行き過ぎるとどうなるか的確に示してくれた。市場原理主義が間違いだとは思わないけど、弱者救済の大切さを教えてくれた。
これが2007年に書かれた本だとしても名著として注目されたと思う。それほどこの本の分析は深いし説得力がある。しかしこれが出版されたのがWW2前夜の1939年という事がドラッカーの超人振りをよく示していると思う。
魂をゆさぶる書, 2005-11-30
ドラッッカーが前世紀最大の経営学者だということはよく知っていたが、その処女作が経営学の本でないということは、ちょっとした驚きだった。しかしなによりも驚かされたことは、この処女作の完成度の高さだ。私はこの本を読んで、ドラッカーは経営学者として一流だが、政治学者としては、さらに上なのではなかろうかと思ったのだった。これほど素晴らしい政治学の本を私は読んだことがない。資本主義と共産主義の対立の中での全体主義の起源について書いた本だが、現代社会においても古びることが全くないことに驚愕せざるをえない。
魂を揺さぶる本である。この書に出会えて、本当に良かった。
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   経営学の「神さま」として知られるP.F.ドラッカーの実質的な処女作で、初版は1939年。「本書は政治の書である」とはじまる初版本への前書きは鬼気迫るものがある。
 「ファシズムとナチズムがヨーロッパの基本原則を脅かす存在であることを知るがゆえに、私は全体主義についての通常の解釈や説明を受け入れるわけにはいかない」「したがって私は、全体主義について、意味のある的確な解釈と説明が必要であると考えた」と、本論ではファシズム台頭の背景を分析。そして宗教が、知識人が、政治家が、これにどうかかわり、何をして何をしてこなかったかを、知識と理論を武器に正面から斬り込んでいく。
   一方で全体主義国家での産業、食糧、所得などの変化を克明につづっている。
   これが著者20代の思索と知ると驚くばかり。読むものに緊張を強いるほどの真摯な筆致で、学問の神髄を感じさせてくれる1冊だ。
   ドラッカーが本書で浮き彫りにした問題の多くは、世紀をまたいでなお持ち越されている。全体主義の指導者原理(225ページ)と、それに熱狂する民衆の分析は、そのまま現代のカルト教団やテロ組織にあてはまるし、「大衆の絶望」「虚無主義への逃避」といった危うい状況を安易に払拭するためのカリスマ待望論も聞こえはじめている。
   密度が濃く、読み解くのは骨だし、重い荷物を負わされた気分になる本でもあるが、「われわれ全員の人生が、あの時代の影響を受けた。われわれはいまだに『何が起こったのか』ではなく、『どうすればあの事態を防ぐことができたか』を考えている。過去を説明することよりも、過去を再現させないことに心を奪われている」から始まる1969年版序文を読むだけでも、この本の価値は十分にある。そしてこの本は「あの事態を防ぐこと」のできる読者に育つように強烈なメッセージを放っている。(松浦恭子)

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